定義
Free on Board(FOB / 本船渡し条件) とは、国際貿易におけるインコタームズ(Incoterms)の一つで、売主が指定港で貨物を本船に積み込むまでの費用とリスクを負担し、貨物が本船の船舷(船側)を越えた時点で、リスクが買主に移転する取引条件です。
越境ECやDTC(Direct to Consumer)の文脈では、主にB2Bの卸売・一括輸出の場面で登場します。たとえば中国やベトナムの工場から日本やアメリカの倉庫へ商品を送る際、「FOB上海」「FOB深圳」といった形で契約に明記されるのが一般的です。
重要なポイントは次の3つです。
1. 費用負担:売主は輸出通関・港までの輸送・本船への積み込み費用を負担
2. リスク移転:貨物が本船の船舷を越えた瞬間にリスクが買主へ移る
3. 海上輸送費・保険:買主が手配・負担する
つまり「船に乗るまでは売主、乗った後は買主」というシンプルな分岐点を持つ条件です。
类比(たとえ話)
FOBは、「ラーメン店のカウンター渡し」 に似ています。
- 店主(売主)は、麺を茹で、盛り付け、カウンターに置くまで責任を持つ
- お客さん(買主)がどんぶりを受け取った瞬間、熱さでやけどするリスクはお客さん側に移る
- 店主は「お客さんの家まで運ぶ」責任は負わない
この「カウンター=本船の船舷」というイメージを持つと、FOBの責任分岐点が直感的に理解できます。越境ECでいうと、「自社倉庫からキャリアの集荷トラックに荷物を渡す瞬間」 に近い感覚です。
公式(費用とリスクの計算式)
FOB価格は、次のように分解できます。
FOB価格 = 商品原価 + 国内輸送費 + 輸出通関費 + 本船積込費
買主が負担する総コストは:
買主総コスト = FOB価格 + 海上運賃 + 保険料 + 輸入通関費 + 国内配送費
具体例①:上海→東京、20ftコンテナ1本
| 項目 | 金額(USD) | 負担者 |
|---|---|---|
| 商品原価 | 12,000 | 売主 |
| 工場→上海港トラック | 300 | 売主 |
| 輸出通関 | 150 | 売主 |
| 本船積込費 | 200 | 売主 |
| **FOB上海価格** | **12,650** | — |
| 海上運賃(上海→東京) | 800 | 買主 |
| 海上保険 | 60 | 買主 |
| 輸入通関・配送 | 450 | 買主 |
| **買主総コスト** | **13,960** | — |
具体例②:深圳→ロサンゼルス、LCL 5CBM
- FOB深圳価格:4,200 USD
- 海上運賃:380 USD
- 保険:25 USD
- 買主総コスト:4,605 USD
具体例③:DTC小口輸出(FOBベース)
- 1ロット50個、FOB価格 1個あたり18 USD → FOB総額 900 USD
- 海上運賃(LCL):120 USD
- 保険:8 USD
- 買主総コスト:1,028 USD
- 1個あたり実質コスト:20.56 USD
比較表:FOB vs 主要インコタームズ
| 条件 | リスク移転点 | 海上運賃 | 保険 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| **EXW** | 工場渡し | 買主 | 買主 | 買主が全物流を掌握したい |
| **FCA** | キャリア引渡し | 買主 | 買主 | コンテナ・航空便中心 |
| **FOB** | 本船船舷 | 買主 | 買主 | 海上コンテナ・在来船 |
| **CFR** | 本船船舷 | 売主 | 買主 | 売主が運賃交渉に強い |
| **CIF** | 本船船舷 | 売主 | 売主 | 売主が保険込みで提示 |
| **DDP** | 買主倉庫 | 売主 | 売主 | DTC向け・買主が楽 |
越境EC・DTCでは、FOBは「B2B卸」、DDPは「消費者直送」 と使い分けるのが定石です。
应用场景(越境EC・DTCでの実践)
1. 中国工場からの一括仕入れ
アリババや1688で仕入れる際、サプライヤーは「FOB寧波」などの条件を提示してきます。この場合、海上運賃は自社でフォワーダーと交渉する必要があります。
2. アマゾンFBAへの納品
中国→日本のFBA倉庫へ送る場合、FOBで買い取り、フォワーダー経由で海上輸送→通関→FBA納品というルートが一般的です。
3. DTCブランドの初回ロット
小ロット(例:500個・FOB総額9,000 USD)では、FOB条件で仕入れ、海上LCLで輸送し、自社倉庫で検品後にECサイトで販売する流れがコスト効率に優れます。
4. 為替・運賃変動への対応
FOBは海上運賃が買主負担のため、運賃高騰時のリスクを買主が負う点に注意。2024年の紅海情勢では上海→ロッテルダム運賃が一時4倍に跳ね上がり、FOB契約の買主が大きな影響を受けました。
常见误区
誤解①「FOBなら売主が輸送費全部を持つ」
→ 正しくは本船積込まで。海上運賃は買主負担です。
誤解②「コンテナ輸送でもFOBが最適」
→ Incoterms 2020では、コンテナ物流にはFCAが推奨されています。FOBは在来船・ばら積み向けの伝統的条件です。
誤解③「FOB価格=最終仕入原価」
→ 海上運賃・保険・関税・国内配送を加算する必要があります。DTCではランディングコストで計算しましょう。
誤解④「リスクは港に着いた時に移る」
→ リスク移転は本船の船舷を越えた瞬間。航海中の事故は買主負担です。
誤解⑤「FOBとCIFは同じ」
→ 費用負担が異なります。CIFは売主が運賃・保険を負担しますが、リスク移転点はFOBと同じです。
関連术语
- FCA(Free Carrier):キャリア引渡し条件。コンテナ物流の現代標準
- CFR(Cost and Freight):運賃込み条件
- CIF(Cost, Insurance and Freight):運賃・保険込み条件
- EXW(Ex Works):工場渡し条件
- DDP(Delivered Duty Paid):関税込み渡し条件。DTC向け
- B/L(船荷証券):FOB取引で必須の書類
- フォワーダー:FOB買主側で手配する物流業者
- ランディングコスト:FOB価格+諸費用の総原価
まとめ
FOBは「本船に乗るまでが売主、乗った後が買主」というシンプルな分岐点を持つ国際貿易の基本条件です。越境EC・DTC担当者は、FOB価格だけでなくランディングコスト全体を把握し、コンテナ物流ではFCAとの使い分けを意識することが重要です。特に海上運賃の変動リスクを買主側で負う点を理解し、フォワーダーとの連携を早期に進めましょう。