定義
Request for Quotation(リクエスト・フォー・クオテーション/見積依頼) とは、DTC・越境ECブランドが新商品を企画した際、複数のサプライヤーに対して「この仕様・この数量で、いくらで、いつ納品できるか」を書面で問い合わせる調達プロセスのことです。略称は RFQ。日本語の現場では「見積依頼書」「RFQ」と呼ばれ、英語圏のサプライヤーとのやり取りでは必ずこの用語が登場します。
RFQの本質は「価格の提示を求める」ことではなく、「比較可能な条件を揃えて引き出す」ことにあります。単に「いくらですか?」と聞くだけでは、サプライヤーごとに前提条件がバラバラで比較できません。仕様・数量・納期・貿易条件(インコタームズ)・支払条件を明記した上で送ることで、初めて横並びの比較が可能になります。
类比:RFQは「引越しの一括見積もり」に近い
引越しをするとき、1社だけに頼む人は少数派です。多くの人は「3LDK・家族4人・〇月〇日・大阪→東京」という同じ条件を複数の業者に伝え、見積もりを並べて比較します。このとき条件を揃えないと、A社は「平日昼間」、B社は「祝日深夜」で見積もってきて、価格差の意味が分からなくなります。
RFQもまったく同じです。商品仕様・数量・納品希望日・梱包方法・検査基準を統一して送るからこそ、届いた見積書が「比較できる数字」になります。逆に言えば、条件が曖昧なRFQは、返ってきた見積もりを無意味にするのです。
公式:RFQで揃えるべき7つの要素
RFQの精度は、次の要素がすべて埋まっているかで決まります。
RFQ成立条件 = ①仕様 + ②数量 + ③目標単価 + ④納期 + ⑤インコタームズ + ⑥支払条件 + ⑦検査基準
| 要素 | 記入例 | 抜けた場合のリスク |
|---|---|---|
| ① 仕様 | ステンレス製タンブラー、容量350ml、二重構造、ロゴ印刷あり | 材質違いで見積もりが破綻 |
| ② 数量 | 初回1,000個、リピート時3,000個/回 | 単価がMOQ前提とズレる |
| ③ 目標単価 | 目標FOB 2.80 USD/個 | 交渉の起点がなくなる |
| ④ 納期 | 発注後45日以内に深圳港出荷 | 航空便前提の高額見積もりが来る |
| ⑤ インコタームズ | FOB深圳 / DDPロサンゼルス | 輸送費の責任範囲が曖昧 |
| ⑥ 支払条件 | 30%前払い、70%はB/Lコピー時 | キャッシュフロー計画が崩れる |
| ⑦ 検査基準 | AQL 2.5、第三者検品必須 | 不良品トラブルの原因に |
たとえば数量を「1,000個」と明記した場合、サプライヤーは材料ロット・段取り替え・梱包資材をすべて1,000個前提で計算します。ここが「500個」だと単価は1.3〜1.6倍に跳ね上がるのが業界の相場です。数量は単価に直結する最大の変数だと覚えておきましょう。
比較表:RFQ・RFP・RFIの違い
調達の場面では、似た略語が混在します。混同するとサプライヤーに「何を求められているのか」が伝わりません。
| 項目 | RFQ(見積依頼) | RFP(提案依頼) | RFI(情報提供依頼) |
|---|---|---|---|
| 目的 | 価格と納期の提示 | 解決策・企画の提案 | 市場情報・候補先の収集 |
| 仕様の確定度 | 高い(ほぼ確定) | 中程度(方向性のみ) | 低い(未確定) |
| 主な回答内容 | 単価・MOQ・リードタイム | 提案書・体制・スケジュール | 会社概要・実績・能力 |
| 使うタイミング | 発注先を絞り込む段階 | 新規カテゴリ立ち上げ時 | 初期リサーチ段階 |
| DTCでの例 | タンブラー1,000個の見積もり | 新ブランドのOEM提案 | 新工場の候補探し |
RFQは仕様が固まっている前提のツールです。逆に「どんな商品が作れるか分からない」段階でRFQを送っても、サプライヤーは回答に困ります。まずRFIで候補を集め、RFPで方向性を固め、最後にRFQで価格を確定させる——この順番が基本です。
応用場景:DTCブランドの実際の使い方
場景1:新商品の初回発注
たとえば月商300万円を目指すアパレルDTCが、新作Tシャツを企画したとします。綿100%・240g/m²・3色・各500枚(計1,500枚)の条件で、5社にRFQを送付。返ってきた見積もりがFOB単価4.20〜6.80 USD、リードタイム35〜70日とバラついた場合、単価だけでなくリードタイムも評価軸に入れます。シーズン商材なら、単価が0.50 USD高くても35日で納品できるサプライヤーを選ぶ判断も成立します。
場景2:リピート発注の値下げ交渉
初回1,000個をFOB 2.80 USDで発注し、売上が好調で3,000個に増やすケース。このとき「前回と同じ仕様で3,000個」と明記してRFQを再送すると、スケールメリットで単価が2.30〜2.45 USDまで下がるのが一般的です。数量が3倍になれば単価は10〜20%下がるという感覚を持っておくと、交渉の目標値が立てやすくなります。
場景3:複数カテゴリの一括調達
タンブラー・トートバッグ・ステッカーを同時に企画した場合、それぞれ別々にRFQを出すよりも、1つのRFQに3アイテムをまとめて記載した方が、サプライヤー側も「トータル受注額」で判断でき、優先対応を得やすくなります。
常見誤区
誤区1:1社だけにRFQを送る
1社だけでは「その価格が高いのか安いのか」が判断できません。最低3社、できれば5社に送るのが基本です。5社送れば、外れ値(極端に高い・安い)を除いた中央値が見えます。
誤区2:仕様を口頭やチャットだけで伝える
「前と同じ感じで」は通用しません。必ずExcelかPDFのRFQシートを作り、型番・寸法・材質・色・印刷方法まで記載します。後のトラブル防止にもなります。
誤区3:単価だけで比較する
FOB 2.50 USDのA社とFOB 2.80 USDのB社。一見A社が安いですが、A社はMOQ 3,000個、B社はMOQ 1,000個なら、初回発注ではB社の方が総支払額は少なく済みます。単価×数量+送料+関税の総額で比較しましょう。
誤区4:納期を確認しない
単価が安くても、納期が90日かかるサプライヤーは、シーズン商材では使いものになりません。特に中国旧正月(1月下旬〜2月中旬)は工場が2〜3週間止まるため、この時期を挟むRFQでは納期を必ず確認します。
誤区5:RFQを送りっぱなしにする
送信後3〜5営業日で返信がなければ、リマインドを入れます。返信率は一般的に5社送って3〜4社程度。全社から返ってくる前提でスケジュールを組まないことです。
関連術語
- MOQ(Minimum Order Quantity):最小発注数量。RFQ回答に必ず含まれる。
- FOB / DDP(インコタームズ):輸送費とリスクの分担範囲を定める貿易条件。
- サンプル依頼(Sample Request):RFQ後、発注前に実物を確認する工程。
- Purchase Order(PO/発注書):RFQと見積もりを経て正式に発注する書類。
- AQL(Acceptable Quality Limit):検品で許容される不良率の基準。
- リードタイム(Lead Time):発注から納品までの日数。RFQの重要評価軸。
RFQは「安く買うための書類」ではなく、「比較できる状態を作るための書類」です。条件を揃え、複数社から数字を集め、総額と納期で判断する。この基本を押さえれば、初回の発注でも大きく外すことはありません。まずは3社に送るところから始めてみてください。