第69篇 甘茂亡秦且之齐

出处:战国策·秦策二

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📜 原文(文言文)

甘茂亡秦,且之齐,出关遇苏子,曰:“君闻夫江上之处女乎?”苏子曰:“不闻。”曰:“夫江上之处女,有家贫而无烛者,处女相与语,欲去之。家贫无烛者将去矣,谓处女曰:‘妾以无烛,故常先至,扫室布席,何爱余明之照四壁者?幸以赐妾,何妨于处女?妾自以有益于处女,何为去我?’处女相语以为然而留之。今臣不肖,弃逐于秦而出关,愿为足下扫室布席,幸无我逐也。”苏子曰:“善。请重公于齐。”乃西说秦王曰:“甘茂,贤人,非恒士也。其居秦累世重矣,自崤塞、溪谷,地形险易尽知之。彼若以齐约韩、魏,反以谋秦,是非秦之利也。”秦王曰:“然则奈何?”苏代曰:“不如重其贽,厚其禄以迎之。彼来则置之槐谷,终身勿出,天下何图?”秦王曰:“善。”与之上卿,以相迎之齐。甘茂辞不往,苏代伪谓齐湣王曰:“甘茂,贤人也。今秦与之上卿,以相迎之,甘茂德王之赐,好为王臣,故辞而不往。今王何以礼之?齐若不留,必不德王。不如留之以市秦。”齐王曰:“善。”赐之上卿,命而处之。

📖 白话文翻译

甘茂、秦より逃れて斉に赴かんとす。函谷関を出でて、蘇代に遇ふ。曰く、「君、江上の処女の話を聞きたることあらんや。」蘇代曰く、「未だ聞かず。」甘茂曰く、「江上に処女の群あり。其中に家貧しくして燭を買ふ能はざる者あり。処女ら相謀りて之を逐はんとす。貧しき処女、去るに臨みて曰く、『我、燭なければ、故に常に先づ至りて、室を掃き席を鋪く。君たち何ぞ四壁の余光を惜しまんや。之を我に賜ふも、君たちに於いて何の妨げかあらん。我、自ら君たちに益ありと思ふ。何の故にか我を逐はんとす。』処女ら相謀りて其の言の理あるを以て、遂に之を留む。今、我、不肖なるも、秦に棄てられて出で、関を出づ。願はくは君のために室を掃き席を鋪かん。逐はざらんことを望む。」蘇代曰く、「善し。我、斉をして君を重からしめん。」是に於いて蘇代、西のかた秦に往きて秦王に説きて曰く、「甘茂は賢人なり、常人に非ず。彼、秦に数世用ゐられ、崤山より溪谷に至るまで、地形の険易を悉く知る。若し彼、斉に拠り韓・魏に合し、反つて秦を図らば、秦の不利なり。」秦王曰く、「奈何せん。」蘇代曰く、「厚礼を備へ、禄秩を高うして之を迎へよ。来たらば槐谷に安置し、終身出ださざれば、天下亦た奈何ともす可からず。」秦王曰く、「善し。」上卿の位を授け、相印を以て斉に之を迎ふ。甘茂、辞して往かず。蘇代又た偽りて斉湣王に謂ひて曰く、「甘茂は賢人なり。今、秦、上卿の位を之に与へ、相印を以て迎ふ。甘茂、大王の賜を感じ、願はくは大王の臣たらんと欲し、故に辞して往かず。今、大王何を以て之を遇せん。若し斉、之を留めずば、彼必ず復た大王を感ぜじ。之を留めて、以て秦と市を為さんよりは如かず。」斉王曰く、「善し。」甘茂に上卿の位を賜ひ、之を安置す。

💡 商战启示录

甘茂の知恵は、自らの劣勢を優勢へと転じる点にある。彼は川辺の乙女たちの故事を借りて、自らが「燭を持たぬ者」でありながらも「先に至りて室を掃き席を布く」ことで付加価値を提供し、集団の中に足場を得られることを示唆した。これは現代のビジネスに照らせば、新規入社の社員や創業期の企業が資源不足の窮地に直面した際、自らの不足のみを強調するのではなく、チームやパートナーに増分価値をもたらす切り口を能動的に探すべきだという教訓となる。甘茂が言う「乙女に益あり」とは、まさにこのことである。蘇代の縦横家としての手腕は、商業交渉における梃子(レバレッジ)の術を示している。彼は先に秦王へ甘茂が斉に奔る脅威を誇張して伝え、秦に高規格での招聘を促した。次に斉王へは、甘茂が感激のあまり辞退したと偽り、その価値を引き上げ、ついに斉王をして同じ高位で留用させた。これは現代のヘッドハンティングや企業間の人材争奪戦において、競争的なオファーを演出することで交渉の駒を上げる手法に通じる。甘茂の成功は「勢いを借りる」ことを知っていた点にある。すなわち、蘇代という外部の代理人を介して情報を伝えさせ、自ら誇ることをしなかったのである。商業協力においても、時に第三者による保証や競争入札の雰囲気を醸成することが、自らの交渉力を効果的に高める。また、甘茂の「辞して往かず」も戦略的な拒絶であり、退くことで進み、斉王に自発的な上積みを迫ったのである。これは管理者に対し、人材の留用や商業交渉において、適宜忠誠や異議を示すことが、かえって相手の惜しむ心や投資意欲を喚起し、双方向のウィンウィンを実現し得ることを示唆している。