第281篇 孟尝君问门下诸客
出处:战国策·齐策六
📜 原文(文言文)
孟尝君问门下诸客:“谁习计会,能为文收责于薛者乎?”冯谖署曰:“能。”孟尝君怪之,曰:“此谁也?”左右曰:“乃歌夫长铗归来者也。”孟尝君笑曰:“客果有能也,吾负之,未尝见也。”请而见之,谢曰:“文倦于事,愦于忧,而性懦愚,沉于国家之事,开罪于先生。先生不羞,乃有意欲为收责于薛乎?”冯谖曰:“愿之。”于是约车治装,载券契而行。辞曰:“责毕收,以何市而反?”孟尝君曰:“视吾家所寡有者。”驱而之薛,使吏召诸民当偿者,悉来合券。券遍合,起,矫命以责赐诸民,因烧其券,民称万岁。长驱到齐,晨而求见。孟尝君怪其疾也,衣冠而见之,曰:“责毕收乎?来何疾也!”曰:“收毕矣。”“以何市而反?”冯谖曰:“君云‘视吾家所寡有者’。臣窃计,君宫中积珍宝,狗马实外厩,美人充下陈。君家所寡有者,以义耳!窃以为君市义。”孟尝君曰:“市义奈何?”曰:“今君有区区之薛,不拊爱子其民,因而贾利之。臣窃矫君命,以责赐诸民,因烧其券,民称万岁。乃臣所以为君市义也。”孟尝君不说,曰:“诺,先生休矣!”后期年,齐王谓孟尝君曰:“寡人不敢以先王之臣为臣。”孟尝君就国于薛,未至百里,民扶老携幼,迎君道中。孟尝君顾谓冯谖:“先生所为文市义者,乃今日见之。”
📖 白话文翻译
孟嘗君、門下の衆客に問いて曰く「誰か会計の事に習熟し、我が代わりに薛地に至りて債を収むることを得ん」と。馮諼、署に名を書して曰く「能くす」と。孟嘗君怪しみて曰く「此れ誰ぞ」と。左右曰く「乃ち『長鋏帰れ』を歌う者なり」と。孟嘗君笑いて曰く「客果たして能あり。吾之を虧き、未だ嘗て相見ず」と。是に於いて請じて之を見、謝して曰く「吾倦みて国事に累され、憂に惑溺し、性懦弱愚昧にして、国事に沈没し、先生に得罪せり。先生以て恥と為さず、乃ち意有りて我が為に薛に至りて債を収めんとするか」と。馮諼曰く「願はくは之を収めん」と。是に於いて車馬を備へ、行装を整へ、債券を載せて発つ。辞するに及びて曰く「債収め畢はらば、何をか買ひて帰らん」と。孟嘗君曰く「吾が家の乏しき所を視よ」と。馮諼、車を駆りて薛に至り、吏をして当に債を償ふべき民を召し、皆な来たりて券を校せしむ。券遍く校し畢はりて、馮諼起ち、孟嘗君の命を仮り、債を賜ひて民に与へ、因りて其の券を焼く。民、万歳を呼ぶ。馮諼、長驅して斉に至り、晨に孟嘗君を求めて見ゆ。孟嘗君、其の速やかなるを怪しみ、衣冠を整へて之を見て曰く「債収め畢はりしか。何ぞ来たるの速やかなるや」と。馮諼曰く「畢はれり」と。「何をか買ひて帰りし」と。馮諼曰く「君『吾が家の乏しき所を視よ』と曰へり。臣窃かに計るに、君の宮中は珍宝を積み、狗馬は外厩に満ち、美色の女は下堂に列なれり。君の家の乏しき所は、唯だ『義』のみならん。臣窃かに君の為に義を買ひたり」と。孟嘗君曰く「義を買ふとは如何」と。馮諼曰く「今君、小き薛の地有りて、民を撫愛せず、反つて商人の如くして之が上に利す。臣窃かに君の命を仮り、債を賜ひて民に与へ、券を焼きて之を棄て、民、万歳を呼ぶ。此れ即ち臣が君の為に買ひし義なり」と。孟嘗君悦ばず、曰く「諾、先生休めよ」と。歳を閲すること一年、斉王、孟嘗君に謂ひて曰く「寡人、先王の臣を以て臣と為すことを敢へず」と。孟嘗君、因りて封地の薛に就く。未だ百里に至らざるに、民、老を扶け幼を携へ、路に迎ふ。孟嘗君、顧みて馮諼に謂ひて曰く「先生の我が為に買ひし義、今日乃ち之を見る」と。
💡 商战启示录
馮諼が債券を焼き捨てて義を買うという行為は、実に現代商業における「長期的価値投資」の古代版範例である。彼は短期的な債権回収を放棄し、民心とブランドの評判に投資した。その結果、孟嘗君が失脚した際に大きな見返りを得たのである。これは現代の企業に示唆を与える——過度に短期的利益を追求すれば、顧客関係とブランド忠誠度を損なう恐れがある。戦略的な譲歩や顧客配慮といった「義を買う」行為は、数値化し難い信頼資産を構築し得る。例えば、海底撈はサービスに巨額を投じ、期待を超える体験を提供することで、短期的にはコスト増に見えるが、顧客の口碑と再訪率を勝ち取り、長期的な競争優位を形成した。また、アマゾンは初期に赤字経営でユーザーを補助し、顧客体験を中核に据えたことで、最終的に電子商取引の帝国を築き上げた。馮諼の知恵は「寡有る者」を見極めた点にある——孟嘗君が欠いていたのは富ではなく、道義的支援であった。現代企業もまた、自らの「寡有る者」を省みるべきである——それは技術革新か、従業員の帰属意識か、それとも社会的責任か。眼前の小利を手放し、生態系の長期的健全性を追求することで、危機の際に「百姓が君を迎える」が如きユーザー忠誠とステークホルダーの支持を得られるのである。この戦略が強調するのは、真のビジネス戦略とは財務指標と無形資産の均衡を図り、先見をもって未来を布石することにある、という点である。