定義
ランデッドコスト(Landed Cost) とは、商品が最終目的地の倉庫に届くまでに発生したすべてのコストを合算した実際の仕入れ原価です。単なる商品代(FOB価格)ではなく、国際輸送費、関税、通関手数料、保険、国内配送費、さらには為替手数料や検品コストまで含めた「真の原価」を指します。
DTC・越境ECにおいて、ランデッドコストは価格設定・粗利計算・在庫評価・広告ROAS判断のすべての土台となる指標です。ここを誤ると、売上が伸びているのに利益が出ないという典型的な罠に陥ります。
类比(たとえ話)
ランデッドコストは、「引っ越しの総費用」に似ています。
- 家賃(= 商品代 FOB)
- 引っ越し業者への配送料(= 国際輸送費)
- 高速道路代・駐車場代(= 関税・通関手数料)
- 家具の保険(= 海上保険)
- 新居までのラストワンマイル配送(= 国内配送)
「家賃が安いから」と契約しても、搬送費や保険で想定外の出費が出れば、トータルでは割高になります。ECも同じで、FOB価格だけで仕入れ判断をするのは危険です。
計算式
Landed Cost = 商品代(FOB) + 国際輸送費 + 関税 + 通関手数料
+ 保険料 + 国内配送費 + その他雑費
1個あたりのランデッドコスト:
1個あたり = Landed Cost 合計 ÷ 出荷個数
実際の数値例:
| 項目 | 金額(円) |
|---|---|
| 商品代(FOB・500個) | 250,000 |
| 国際輸送費(海上LCL) | 45,000 |
| 関税(関税率 8%) | 20,000 |
| 通関手数料 | 15,000 |
| 海上保険 | 3,000 |
| 国内配送費 | 12,000 |
| **Landed Cost 合計** | **345,000** |
| **1個あたり** | **690円** |
FOB単価は500円ですが、実際の原価は690円(+38%)であることがわかります。
比較表:FOB価格 vs ランデッドコスト
| 比較軸 | FOB価格のみ | ランデッドコスト |
|---|---|---|
| 含まれる費用 | 商品代のみ | 商品代+物流+関税+雑費すべて |
| 1個あたり原価 | 500円 | 690円 |
| 想定粗利率(販売2,000円) | 75% | 65.5% |
| 価格設定の精度 | 低い(過大評価しがち) | 高い(実態に即す) |
| 在庫評価 | 不正確 | 適正 |
| 広告ROAS判断 | 甘くなる | 厳格に算出可能 |
応用シーン
1. 新商品の価格設定
ランデッドコスト690円の商品を、DTCで3.5倍掛け(2,415円)で販売するのが一般的。広告費・決済手数料・返品率を考慮すると、最低でも3倍以上のマークアップが安全圏です。
2. 利益率シミュレーション
販売価格2,400円、ランデッドコスト690円、広告費600円、決済手数料3.6%(86円)、配送費400円の場合:
粗利 = 2,400 - 690 - 600 - 86 - 400 = 624円 利益率 = 624 ÷ 2,400 = 26%
3. 発注ロットの最適化
500個発注なら1個690円、1,000個発注なら輸送費・通関費が分散され1個あたり620円まで下がる可能性があります。ロットを増やすことでランデッドコストを最適化できます。
4. 関税の見直し(HSコード最適化)
HSコードの分類次第で関税率が8%→3%に下がるケースもあり、500個発注なら12,500円のコスト削減に直結します。
よくある誤解
1. 「FOB価格=原価」だと思い込む
→ 実際は1.3〜1.5倍になるのが標準。これを無視すると利益が消えます。
2. 「関税は販売後に払うから原価に入れなくていい」
→ 発生時点で原価に計上すべき。後回しにすると資金繰りが狂います。
3. 「送料無料にすればランデッドコストは関係ない」
→ 送料無料でも自社負担。原価に含めないと実質赤字になります。
4. 「為替は気にしなくていい」
→ 1ドル=150円→160円で仕入れれば、500個発注時に約33,000円のコスト増。為替予約やタイミング管理が必須です。
5. 「少量発注のほうがリスクが低い」
→ 1個あたりのランデッドコストは跳ね上がります。100個発注なら輸送費・通関費が分散されず、1個あたり900円超になることも。
6. 「返品・不良品コストは別枠」
→ 返品率5%なら、実質的なランデッドコストは+5%。これを価格に織り込まないと利益が削られます。
関連用語
- FOB価格:本船渡し条件での商品代。ランデッドコストの出発点。
- CIF価格:商品代+保険+運賃込みの条件。
- HSコード:関税率を決定する国際的な商品分類コード。
- DDP / DDU:関税支払い責任の所在を示すインコタームズ。
- COGS(売上原価):ランデッドコストを基礎に算出される損益計算上の原価。
- GM(粗利率):ランデッドコストと販売価格から導かれる最重要KPI。
- 在庫回転率:ランデッドコストが高いほど、回転を早める必要がある。
まとめ
ランデッドコストは、DTC・越境ECの「利益の真実」を映す鏡です。FOB価格だけで判断すると、売上は伸びても手元に現金が残らないという事態に陥ります。発注前に必ず7項目(商品代・輸送・関税・通関・保険・国内配送・雑費)を試算し、1個あたりの実原価を把握しましょう。そして価格設定・広告ROAS・在庫計画のすべてを、このランデッドコストを基準に設計することが、持続的に稼ぐDTCブランドへの第一歩です。