第94篇 文信侯欲攻赵以广河间
出处:战国策·秦策五
📜 原文(文言文)
文信侯欲攻赵以广河间,使刚成君蔡泽事燕三年,而燕太子质于秦。文信侯因请张唐相燕,欲与燕共伐赵,以广河间之地。张唐辞曰:“燕者必径于赵,赵人得唐者,受百里之地。”文信侯去而不快。少庶子甘罗曰:“君侯何不快甚也?”文信侯曰:“吾令刚成君蔡泽事燕三年,燕太子已入质,吾自请张卿相燕而不肯行。”甘罗曰:“臣行之。”文信侯叱去曰:“我自行之而不肯,汝安能行之也?”甘罗曰:“夫项橐生七岁而为孔子师,今臣生十二岁于兹矣!君其试臣,奚以遽言叱也?”
甘罗见张唐曰:“卿之功孰与武安君?”唐曰:“武安君战胜攻取,不知其数;攻城堕邑,不知其数。臣之功不如也。”甘罗曰:“卿明知功之不如武安君与?”曰:“知之。”“应侯之用秦也,孰与文信侯专?”曰:“应侯不如文信侯专。”曰:“卿明知为不如文信侯专与?”曰:“知之。”甘罗曰:“应侯欲伐赵,武安君难之,去咸阳七里,绞而杀之。今文信侯自请卿相燕,而卿不肯行,臣不知卿所死之处矣!”唐曰:“请因孺子而行!”令库具车,厩具马,府具币,行有日矣。甘罗谓文信侯曰:“借臣车五乘,请为张唐先报赵。”
见赵王,赵王郊迎。谓赵王曰:“闻燕太子丹之入秦与?”曰:“闻之。”“闻张唐之相燕与?”曰:“闻之。”“燕太子入秦者,燕不欺秦也;张唐相燕者,秦不欺燕也。燕秦不相欺,则伐赵,危矣。燕秦所以不相欺者,无异故,欲攻赵而广河间也。今王赍臣五城以广河间,请归燕太子,与强赵攻弱燕。”赵王立割五城以广河间。归燕太子。赵攻燕,得上谷三十六县,与秦什一。
📖 白话文翻译
文信侯呂不韋は趙を攻めて河間の封地を広げようとし、剛成君蔡澤を燕に遣わして三年間事(つか)えさせたところ、燕の太子丹が秦に入質した。文信侯はまた張唐を請じて燕の相国にしようとし、燕と連合して趙を攻め、河間の地を広げんとした。張唐は辞して言う、「燕に往かば必ず趙を経由せん。趙人が我を獲れば、百里の地を賞す。」文信侯は喜ばずして去る。少庶子甘羅が問う、「君侯、何ぞ此の如く悦ばざるや。」文信侯曰く、「我れ蔡澤をして燕に事(つか)えしむること三年、燕太子已に入質す。我れ自ら張唐を請じて燕の相国とせんとすれども、肯(あ)えて行かず。」甘羅曰く、「臣能く之を行かしむ。」文信侯叱って曰く、「我れ自ら之を請うとも肯えず、子に奈何(いかん)ぞ能くせん。」甘羅曰く、「項橐七歳にして孔子の師と為る。今臣は年十二歳なり。君侯試みに臣を用うるも可ならん。何ぞ遽(には)かに叱するや。」
甘羅、張唐を見て曰く、「君の功、武安君白起に比して如何。」張唐曰く、「武安君は戦勝攻取、勝(あ)げて数うべからず、攻城奪地、勝(あ)げて数うべからず。臣の功は之に如かず。」甘羅曰く、「君、誠に功の武安君に如かざるを知るや。」曰く、「知る。」曰く、「應侯范雎、秦に用事す。文信侯に比して孰れか専らなる。」曰く、「應侯は文信侯の専らなるに如かず。」甘羅曰く、「君、誠に文信侯の専らなるに如かざるを知るや。」曰く、「知る。」甘羅曰く、「昔、應侯趙を伐たんと欲し、武安君は難しと為せり。果たして咸陽を去ること七里にして絞殺せらる。今文信侯自ら君を請じて燕の相国とせんとすれども、君肯えて行かず。臣、君の死する所を知らざるなり。」張唐曰く、「請う、子に因りて行かん。」乃ち車馬幣帛を具え、行期を定む。甘羅、文信侯に謂う、「借(か)すに臣に五乗の車を以てし、臣をして先ず張唐の為に趙に報ぜしめよ。」
甘羅、趙王を見る。趙王、郊外に出でて之を迎う。甘羅、趙王に問う、「燕太子丹の秦に入質せるを聞くや、王聞けりや。」曰く、「聞けり。」曰く、「張唐の燕に相と為るを聞くや。」曰く、「聞けり。」曰く、「燕太子の入秦は、燕の秦を欺かざるなり。張唐の相燕は、秦の燕を欺かざるなり。燕秦相欺かず、則ち趙を伐たんとすれば危うし。燕秦の相欺かざるは他なし、趙を伐ちて河間の地を広げんと欲するのみ。今大王、臣に五城を割きて河間を広げなば、臣、請う秦に燕太子を帰し、強趙と与(とも)に弱燕を伐たん。」趙王、即ち五城を割きて河間を広ぐ。秦、燕太子を帰す。趙、燕を攻めて上谷の三十六県を取り、其の什一を秦に分かつ。
💡 商战启示录
甘羅は十二歳の齢にして、「勢いを借りる」と「均衡を制する」の策を用い、一兵一卒をも費やさずに秦のために河間の地を拡大した。その核心は、まず利害関係をもって張唐を説得し(内部の調整)、次に情報の非対称性と利益の誘引をもって趙王を動かす(外部の駆け引き)ことにあり、最終的に多方の利益の再配分を実現したのである。現代の商戦において、この戦略は「レバレッジド・バイアウト」や「戦略的提携」に似る——巧妙に取引構造を設計し、小をもって大を制する。例えば、ある新興企業は巨頭間の競争を利用し、「補完」の名義で協力を促しつつ、実質的には資源を獲得することができる。また、滴滴と快滴の合併のように、資本の圧力を用いて対手に譲歩を強いる例もある。甘羅の「先に趙に報ずる」は実に「緊迫感を醸成する」ことであり、趙王に秦燕連合の勢いを誤認させ、自ら土地を割譲させたのである。商業交渉においては、しばしば「偽情報」の流布や「戦略的曖昧さ」によって対手の予測に影響を与える。例えば、蘋果公司(アップル)は常に「神秘の新製品」をもって競争相手を牽制する。真の商戦の達人は、直接の対抗にあるのではなく、各方の矛盾を利用して、多贏(あるいは自方のみの勝利)の駆け引きの枠組みを設計し、資源の最適配置を実現することにある。