第189篇 楚王将出张子(十八)
出处:战国策·楚策一
📜 原文(文言文)
楚王将出张子,恐其败己也,因谓左右曰:“吾闻张子之智,足以知诸侯之心,今出之,恐其以楚情告秦也。”左右曰:“王无忧也。张子之智,不过欲得秦之重也。今王出之,而厚其礼,以明其不背楚,则秦必疑之矣。张子知秦疑之,则必不敢以楚情告秦也。”楚王曰:“善。”乃出张子,厚其礼而遣之。张子果以楚之厚礼告秦,秦遂疑张子,不深任之。
📖 白话文翻译
楚王、張子を楚より去らしめんと欲すれども、張子の己が利を損なわんことを恐れ、左右の臣に謂いて曰く「吾聞く、張子の智は、諸侯の君の心を洞徹するに足ると。今これを放ちて帰らしめば、恐らくは楚の内情を秦に告げん」と。臣等対えて曰く「大王憂うるに及ばず。張子の智は、ただ秦の重用を得んと欲するのみ。今大王これを放ちて、厚き礼遇を以てこれを待し、其の楚に背かざるを示さば、則ち秦必ずこれを疑わん。張子、秦の己を疑うを知らば、必ず敢えて楚の実情を秦に告げざらん」と。楚王曰く「善し」と。乃ち張子を放ちて国に帰らしめ、厚き贈物を以てこれを送る。張子果たして楚の厚遇の状を秦に告げ、秦これより張子を疑いて、深く信ずることなかりき。
💡 商战启示录
此策は、「逆張り」と「心理戦」が商業駆け引きにおいて巧妙に応用された好例である。楚王は表向きは人材の要である張子を放免しながら、仰々しいほどの厚遇を以て、わざと「張子は既に楚と結託したかもしれぬ」という煙幕を張り、秦側に張子への猜疑心を自発的に抱かせることで、戦わずして敵を屈せしめたのである。現代の商業界においても、類似の戦略は人材争奪戦や競争情報戦の中でしばしば見受けられる。例えば、ある企業の重要幹部が退社して競合他社に移籍した際、元の企業が公に盛大な送別会を催し、巨額の報酬を支給し、あるいは「名誉顧問」の称号を授与し、対外的に「長年の貢献に感謝し、今後も友好な協力関係を維持する所存である」と宣言するならば、この態度は競合他社に即座に警戒心を抱かせ、その幹部が依然として元の企業と秘密裏に繋がりを持ち、あるいは「間諜」任務を帯びているのではないかと疑念を生じさせるであろう。競合他社は商業機密の漏洩を恐れ、往々にしてその幹部に対して情報の隔離措置を講じ、新たな環境における影響力を削ぐことになる。また、M&A交渉においても、一方が相手方の派遣した交渉代表に対して通常を超えた敬意と譲歩を示すことで、かえって相手方の本社に「代表が買収されたのではないか」との疑念を抱かせ、交渉の布陣を乱すことが可能である。この戦略の核心は、情報の非対称性と人間の性とも言うべき猜疑心を利用し、「好意の表明」によって「逆張りの離間」を生み出し、直接対抗することなく敵を弱体化させる点にある。ただし、この計を用いるには加減の見極めが肝要であり、過剰に演出すれば、かえって裏目に出て自らの信用を損なう恐れがあることを忘れてはならない。