定義
Wholesale Site(卸売特化型D2Cサイト) とは、一般消費者ではなく、小売店・EC販売者・代理店・ディストリビューターといったB2Bバイヤーに向けて、卸価格で商品を供給する独立型ECサイトを指します。Shopify、WooCommerce、BASEなどのプラットフォーム上に構築され、通常のD2Cサイトと同じ技術基盤を使いながら、価格設計・購入フロー・与信管理をB2B向けに最適化している点が特徴です。
一般的なD2Cサイトが「1個から定価で販売」するのに対し、Wholesale Siteは「最低発注数量(MOQ)を設定し、数量に応じて単価を下げる段階的価格(Tiered Pricing)」で運用されます。たとえば、化粧品ブランドが自社の卸サイトで「12個から卸値、48個でさらに15%OFF、144個でさらに25%OFF」といった設計を行うケースが典型です。
类比:卸売サイトは「会員制の業務用スーパー」
イメージに近いのは、一般のスーパーではなく業務用食品卸の会員制倉庫店です。一般客は入れず、事業者登録をしたバイヤーだけが入場でき、棚には業務用サイズの商品が並び、まとめ買いするほど単価が下がる。レジでは請求書払いや掛け取引が使える——これがWholesale Siteの世界観です。
一般D2Cサイトが「カフェの店頭販売」なら、Wholesale Siteは「カフェオーナー向けの豆卸売カウンター」です。同じ商品でも、入口・価格・支払条件がまったく異なります。
公式:卸売サイトの収益構造
Wholesale Siteの基本収益モデルは、次の式で表されます。
卸売売上高 = Σ(SKU別卸単価 × 発注数量) − 返品・値引き 粗利 = 卸売売上高 − 原価(COGS) − 物流費 − 決済手数料 卸単価 = 希望小売価格(MSRP) × (1 − 卸掛け率)
具体例:
- 希望小売価格 4,800円 の商品、卸掛け率 50% → 卸単価 2,400円
- MOQ 12個、月間 40バイヤーが平均 36個発注 → 月間卸売上 ≈ 3,456,000円
- 原価率 35%、物流費 8%、決済手数料 3.5% → 粗利率 ≈ 53.5%
D2C直販に比べて1件あたりの単価は大きくなりますが、1バイヤーあたりの獲得コスト(CAC)を回収するまでの期間が長く、与信リスクも伴う点が収益設計上のポイントです。
比較表:D2Cサイト vs Wholesale Site
| 項目 | 一般D2Cサイト | Wholesale Site(卸売特化型) |
|---|---|---|
| ターゲット | 一般消費者(B2C) | 小売店・EC販売者・代理店(B2B) |
| 価格表示 | 定価(税込表示が主流) | 卸価格(税抜・ログイン後表示が主流) |
| 最低発注数量(MOQ) | なし(1個から) | あり(例:12個、24個、48個) |
| 段階的価格 | ほぼなし | 標準機能(数量が多いほど単価減) |
| 支払方法 | クレジットカード、コンビニ、PayPay等 | 請求書払い、掛け取引、銀行振込 |
| 会員登録 | 任意(ゲスト購入可) | 必須(審査・承認制が多い) |
| 送料 | 購入者負担 or 無料ライン | 発注額に応じ無料、あるいは元払い |
| 消費税表示 | 税込 | 税抜(インボイス対応が前提) |
| 主なKPI | CVR、LTV、カート放棄率 | アクティブバイヤー数、平均発注額、再発注率 |
応用場景
1. アパレル・雑貨ブランドの卸販路開拓
自社D2Cでブランドを確立した後、セレクトショップやECモール出店者向けに卸サイトを開設。MOQ 10点、卸掛け率 55%、シーズンごとに 30%OFF の特別条件を提示する運用が一般的です。
2. 化粧品・サプリメントのOEM/ODM展開
サロン、クリニック、EC転売業者向けに卸価格を提示。ロットごとに化粧箱を変えるカスタマイズ対応も多く、MOQ 100個から受注します。
3. 食品・飲料の業務用卸
飲食店、小売店向けにケース単位で販売。たとえば1ケース24本入り、卸単価 1本あたり 180円、10ケース以上で 160円といった段階設計が典型です。
4. 越境ECバイヤー向け卸
海外の小売店・EC販売者向けに、英語・中国語・韓国語の多言語卸サイトを構築。MOQ 50個、FOB価格提示、国際配送手配まで含めるケースも増えています。
よくある誤解
❌ 誤解1:D2Cサイトの価格をそのまま卸値にすればいい
→ 卸値は「MSRP × 卸掛け率」で設計するのが基本。D2C価格から値引くだけでは、小売店の利益率が確保できず取引が続きません。
❌ 誤解2:MOQを高くすれば売上が伸びる
→ MOQが高すぎると新規バイヤーの参入障壁になります。初回は低MOQ(例:6個)、リピート時に段階的に引き上げる設計が定石です。
❌ 誤解3:誰でも登録できるようにすべき
→ 卸サイトは審査制が原則。屋号・法人番号・販売チャネルの確認を行わないと、価格崩壊や転売トラブルの原因になります。
❌ 誤解4:請求書払いはリスクが高いから避けるべき
→ 与信審査と取引限度額を設定すれば、掛け取引はバイヤーのリピート率を大きく高めます。クレジットカード決済のみだと、大手小売店は取引に応じてくれません。
❌ 誤解5:消費税の扱いはD2Cと同じ
→ 卸取引は税抜表示+インボイス制度対応が前提。適格請求書発行事業者の登録番号がないと、バイヤー側で仕入税額控除が受けられず取引が成立しません。
関連用語
- MOQ(Minimum Order Quantity / 最低発注数量)
- Tiered Pricing(段階的価格)
- MSRP(希望小売価格)
- 卸掛け率(Wholesale Margin)
- B2B与信管理(Credit Limit)
- インボイス制度(適格請求書等保存方式)
- D2C / DTC(Direct to Consumer)
- B2B EC / 卸EC
- リピート発注率(Reorder Rate)