定義
Dead Stock(デッドストック) とは、一定期間以上まったく売れずに倉庫に眠り続けている在庫のことです。日本語では「滞留在庫」「不良在庫」「死に筋在庫」とも呼ばれます。DTC・EC業界では、過去90日間で販売数が0〜1個、かつ在庫回転率が年2回未満のSKUをデッドストックと定義するのが一般的です。
重要なのは「売れない在庫」ではなく「売れる見込みがほぼない在庫」という点です。季節外れ、トレンド終了、サイズ切れ、型落ち、商品ページの訴求ミスなど、原因はさまざまですが、放置すればするほど倉庫代・資金繰り・機会損失の3重苦になります。
たとえるなら
デッドストックは、冷蔵庫の奥に眠った賞味期限切れ寸前の食材です。
- 買ったときは「いつか使う」と思っていた
- 気づけば場所を占有している
- 捨てるのはもったいないが、使う予定もない
- 新しく食材を入れるスペースを奪っている
ECにおいては、倉庫の棚が「冷蔵庫」、キャッシュフローが「冷気」です。デッドストックが増えるほど、新しい売れ筋商品を入れる余裕がなくなり、店全体の回転が鈍ります。
公式
デッドストックの規模とコストは、次の式で把握できます。
デッドストック率(%) = (デッドストックSKU数 ÷ 総SKU数) × 100
在庫回転率(回/年) = 年間売上原価 ÷ 平均在庫高
デッドストック保有コスト(円/年) = 在庫評価額 × 保管コスト率 + 資金コスト + 廃棄・値引き損失
具体例:
- 総SKU数 500、うちデッドストック 75 → デッドストック率 15%
- 在庫評価額 800万円、保管コスト率 年12% → 保管コスト 96万円/年
- 資金コスト率 年3% → 24万円/年
- 合計で年間120万円以上が「何も生まない在庫」に消えている計算
比較表
| 項目 | 健全在庫 | デッドストック |
|---|---|---|
| 販売実績(直近90日) | 継続的に販売あり | 0〜1個 |
| 在庫回転率 | 年4回以上 | 年2回未満 |
| 倉庫占有 | 一時的 | 長期(180日以上) |
| 資金への影響 | 回収済み or 回収見込み | 寝ている |
| 対処法 | 通常運用 | 値引き・セット販売・処分 |
| 商品ページ | 維持 | 統合 or 非公開を検討 |
応用シーン
1. 季節商品の切り替え時
アパレルDTCでは、春夏物が9月に在庫の30〜40%残ることがあります。翌年まで保管すると、トレンドが変わり販売価格が50〜70%下落します。シーズン終了2週間前から段階的に値引きし、在庫を「現金化」するのが定石です。
2. 新商品投入前の棚卸し
新SKUを100追加する前に、既存のデッドストックを50処分すれば、倉庫コストを月3〜5万円削減できます。DTCでは「入れる前に出す」が鉄則です。
3. セット販売・福袋化
単体では売れないAとBを組み合わせ、通常価格の60%でセット販売。客単価を維持しながら在庫を消化できます。
4. アウトレットチャネルへの流し込み
自社ECでブランドイメージを守りつつ、メルカリ・ヤフオク・アウトレットモールなど別チャネルで処分する方法も有効です。
5. 広告での再活性化
GoogleショッピングやMeta広告で、ROAS 1.5以上が見込めるなら、値引き前に再テストする価値があります。ただし90日試して反応がなければ、潔く処分に切り替えます。
よくある誤解
「いつか売れる」
→ 90日売れなかった商品が、次の90日で売れる確率は10%以下です。時間は味方しません。
「値引きするとブランドが傷む」
→ 倉庫に眠らせるほうが、よほどブランドと資金を傷めます。別チャネル・限定セールで分ければ影響は最小化できます。
「在庫は資産だから捨てられない」
→ 会計上は資産でも、実態は負債です。保管費・資金コスト・廃棄リスクを合算すると、マイナスになるケースがほとんどです。
「少量だから問題ない」
→ SKU数が増えると、少量デッドストックが積み上がり、倉庫の30%を占めることがあります。SKU単位で管理しましょう。
「広告を出せば売れる」
→ 商品力・価格・訴求のどれかが根本的にズレている場合、広告費が無駄になります。まず商品ページと価格を見直します。
関連用語
- 在庫回転率:在庫がどれだけ効率的に売れているかを示す指標
- SKU:最小管理単位の商品識別子
- キャッシュフロー:現金の出入り。デッドストックは現金を凍結させる
- ABC分析:売上貢献度で商品をランク分けし、Cランクを処分対象にする手法
- ロスリーダー:集客目的で赤字覚悟で売る商品。デッドストック処理にも応用可
- アウトレット:正規チャネル外で在庫を処分する販路
- 廃棄処分:最終手段。ブランド価値とコストを天秤にかけて判断
デッドストックは「悪」ではありません。発生を前提に、どう早く現金化するかを設計するのがDTCの腕の見せどころです。仕入れ・価格・販促・処分の4段階でルールを決め、数字で判断する習慣をつけましょう。