定義
セトルメント(Settlement/日本語では「精算」「入金確定」とも呼ばれる)とは、決済代行会社(PSP)やカード会社が、一定期間分の取引金額から手数料・返金・チャージバック等を差し引いた「純額」を、加盟店の指定銀行口座へ実際に振り込むプロセスを指します。
重要なのは、「お客様のカード決済が成功した時点」と「お店の口座にお金が入る時点」は別物だという点です。DTC・EC事業において、このタイムラグを正しく理解していないと、キャッシュフロー管理や広告出稿の判断を誤ります。
たとえばShopify PaymentsやStripeを利用する場合、決済承認(Authorization)→ 売上確定(Capture)→ セトルメント(Payout)という3段階を経て、初めて銀行口座に着金します。
类比:レストランの「日締め」と「月次振込」
居酒屋チェーンを想像してください。店舗では毎晩お客様から現金やカードで代金を受け取りますが、本部の銀行口座にそのお金がそのまま即日入るわけではありません。
- レジ締め(=Capture):その日の売上を確定
- 本部での集計・手数料控除(=Fee deduction):カード手数料やシステム利用料を引く
- 銀行振込(=Settlement):翌営業日または週次でまとめて振込
この「レジ締め」と「振込」の間に生じるタイムラグこそがセトルメント期間です。DTCブランドにとっては、売上が立っているのに口座残高が増えていない「見かけの黒字・実質の資金繰り難」を引き起こす要因になります。
公式
セトルメント金額は、一般的に以下の計算式で算出されます。
セトルメント額 = 総売上 − 決済手数料 − 返金額 − チャージバック額 − その他調整額
具体例①(Stripe・日本国内カード)
- 総売上:¥500,000
- 決済手数料:3.6% → ¥18,000
- 返金:¥10,000
- チャージバック:¥0
- セトルメント額 = 500,000 − 18,000 − 10,000 = ¥472,000
具体例②(Shopify Payments・海外カード混在)
- 総売上:$20,000
- 手数料:2.9% + $0.30/件 × 400件 = $580 + $120 = $700
- 返金:$300
- セトルメント額 = 20,000 − 700 − 300 = $19,000
具体例③(PayPal・即時型)
- 総売上:¥120,000
- 手数料:3.6% + ¥40/件 × 60件 = ¥4,320 + ¥2,400 = ¥6,720
- セトルメント額 = 120,000 − 6,720 = ¥113,280
セトルメント方式 比較表
| 項目 | T+2(2営業日) | 週次(Weekly) | 月次(Monthly) |
|---|---|---|---|
| 主な採用PSP | Stripe、Shopify Payments | PayPal、Square | 銀行系ゲートウェイ、一部GMO |
| 着金スピード | 最速 | 標準 | 遅い |
| 手数料目安 | 3.6%〜 | 3.6%〜4.4% | 3.0%〜(低め) |
| キャッシュフロー | ◎ | ○ | △ |
| 返金・チャージバック対応 | 保留期間あり | 保留期間あり | 保留期間長め |
| 向いている事業 | 成長期DTC | 安定EC | 大口B2B |
※T+2=取引日から2営業日後。土日祝を挟むと実質3〜4日かかるケースも。
応用シーン
1. 広告出稿のタイミング設計
Meta広告やGoogle広告は「売上発生」ベースでROASを計測しますが、実際の口座残高はセトルメント後。T+2のPSPなら広告費の支払いと入金のズレは約2〜3日ですが、週次だと最大7日ズレます。資金繰りが厳しい初期DTCはT+2型を選ぶのが定石です。
2. 在庫発注の資金計画
たとえば月商¥3,000,000のブランドが月次セトルメントの場合、月初の仕入れ支払いに対して前月売上の入金が間に合わず、最大で月商の1ヶ月分(¥3,000,000)の運転資金が必要になります。
3. チャージバック対策
セトルメント後でも、チャージバックが発生すると次回セトルメントから相殺されます。そのため「入金=確定利益」と考えるのは危険です。
よくある誤解
❌ 誤解1:「決済完了=即入金」
→ 実際はCaptureとSettlementの間に必ずタイムラグがあります。
❌ 誤解2:「セトルメント額=売上」
→ 手数料・返金・チャージバックが差し引かれた純額です。
❌ 誤解3:「セトルメント日=振込日」
→ セトルメント処理日と銀行着金日はさらに1営業日ズレることがあります。
❌ 誤解4:「返金はその場で消える」
→ 返金処理は次回以降のセトルメントから差し引かれます。既に入金済みなら残高マイナス扱いになることも。
❌ 誤解5:「全PSP同じサイクル」
→ StripeはT+2、PayPalは即時〜週次、銀行系は月次とバラバラ。複数併用時は要確認。
関連用語
- Authorization(オーソリ):カード与信枠の確保。まだ売上確定ではない。
- Capture(キャプチャ):売上の確定処理。セトルメントの起点。
- Payout(ペイアウト):セトルメントとほぼ同義。Stripe等が使う表現。
- Reserve(リザーブ):PSPがリスク対策で一時的に保留する資金。
- Chargeback(チャージバック):顧客による決済取消。セトルメントから相殺。
- Rolling Reserve(ローリングリザーブ):売上の一定%を数ヶ月保留する契約形態。
- Payout Schedule(ペイアウトスケジュール):セトルメント頻度の設定。
まとめ
セトルメントは、DTC・EC事業のキャッシュフローの心臓部です。「売上」と「入金」を混同せず、PSPごとのサイクル・手数料・リザーブ条件を正確に把握することが、黒字倒産を防ぐ第一歩。特に成長期のブランドは、T+2のPSPを軸にしつつ、返金・チャージバックを見込んだ余裕資金を月商の20〜30%確保しておくのが安全です。