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No Repeat Purchase

定義

No Repeat Purchase(無復購) とは、顧客が一度だけ商品を購入し、その後二度と戻ってこない状態を指す。DTC・EC事業における最も静かな致死要因であり、単発のCVRやROASが健全に見えても、LTVが崩壊しているケースの典型パターンである。

日本のEC用語で言えば「一見客止まり」「単発購入層の堆積」に近い。購入者は増えているのに、売上が伸びない——この現象の9割は無復購が原因である。


類比:割烹と牛丼チェーンの差

想像してほしい。駅前に割烹料理店と牛丼チェーンが並んでいる。

- 牛丼チェーン:初回客の30%が翌月また来店する。1人の顧客が年間12回来店し、累計で48,000円を落とす。

- 割烹:初回客の95%は「記念日だけ」で終わる。1人あたり年間1回、8,000円で完結。

売上は初月こそ割烹が勝つ。しかし12ヶ月後、牛丼チェーンのLTVは割烹の6倍になる。これが無復購の正体だ。初回獲得コスト(CAC)を回収する前に、顧客が消える。


公式

LTV = 平均注文額(AOV) × 購入回数(PF) × 粗利率(GM)

購入回数(PF) = 1 + 復購率(RR) + 復購率² + 復購率³ + …

無復購(RR ≒ 0)の場合:

LTV = AOV × 1 × GM

つまりLTV = 初回粗利。CAC > 初回粗利なら、その顧客は獲得した瞬間に赤字である。

具体例:

- AOV = 8,000円、GM = 60%、CAC = 6,000円

- 復購率0% → LTV = 4,800円 → CAC超過で1人あたり1,200円の赤字

- 復購率40% → PF = 1.67 → LTV = 8,016円 → 黒字転換


比較表:健全EC vs 無復購EC

指標健全なDTC無復購EC差分
90日復購率35〜45%3〜8%**約6倍**
購入回数(PF)2.8回1.05回−1.75回
LTV(AOV8,000円/GM60%)13,440円5,040円−8,400円
CAC回収期間2ヶ月回収不能—
紹介率(リファラル)12%1.2%−10.8pt
広告ROAS(初月)1.82.4見かけは良好
広告ROAS(12ヶ月累計)5.62.4**逆転**

注目すべきは最終行。無復購ECは初月ROASが高く見える。これは「新規獲得に全振りしている」証拠であり、麻薬的な数字である。累計で見れば健全ECに完敗する。


応用シーン

1. 化粧品DTCの消耗品トラップ

某スキンケアブランドは、初回購入者の72%が90日以内に離脱。原因は「定期購入への導線が購入完了画面の下層に隠れていた」こと。購入直後のサンクスメールにワンクリック定期導線を置くだけで、復購率は8%→31%に改善した事例がある。

2. アパレルの季節性誤認

「夏物は季節性だから復購しない」は言い訳である。購買データを見ると、離脱者の64%は「サイズ交換の問い合わせに3日返信がなかった」ことがトリガー。無復購の原因は商品ではなくオペレーションにあることが多い。

3. サプリメントの解約タイミング

定期購入でも「2回目配送前に解約」が発生する。これは厳密には無復購の前段階。初回配送後7日目のステップメールで「飲み方のコツ」を送るだけで、3回目到達率が41%→58%に上がる。


よくある誤解

❌ 誤解1:「リピート率は商品力で決まる」

→ 実際は購入後72時間の体験設計で決まる。商品力は必要条件だが十分条件ではない。

❌ 誤解2:「新規獲得を止めれば復購に集中できる」

→ 新規が止まると復購の分母も消える。獲得と復購は同時に設計するもの。

❌ 誤解3:「メルマガを送れば戻ってくる」

→ 日本のユーザーは1通目で開封、2通目で無視、3通目で解除。頻度よりタイミングと文脈。

❌ 誤解4:「無復購はBtoCだけの問題」

→ BtoBのSaaSでも「初月解約」として同構造で発生する。


関連用語

- LTV(Life Time Value):顧客生涯価値。無復購はLTVを初回粗利に固定する。

- CAC(Customer Acquisition Cost):顧客獲得単価。回収には復購が必須。

- Churn Rate(解約率):復購率の裏返し。RR + Churn ≒ 1。

- Cohort Analysis(コホート分析):無復購を可視化する唯一の手法。

- RFM分析:Recency / Frequency / Monetary。Fが1に固定されるのが無復購。

- One-Time Buyer(単発購入者):無復購顧客の別称。

- Repeat Rate(復購率):日本のECでは「リピート率」と呼ばれることが多い。


結論

無復購は「失敗」ではなく「設計漏れ」である。商品が悪いのではない。購入後の72時間、7日、30日、90日という4つの分岐点に何も置いていないだけだ。初月ROASに踊らされず、12ヶ月コホートで自社を直視せよ。そこに無復購の真実が映っている。