定義
Core Web Vitals(コアウェブバイタル) とは、Googleが2020年に正式導入した、ユーザー体験(UX)を定量的に評価するための3つの指標群です。2021年6月のPage Experienceアップデート以降、検索ランキングのシグナルとしても組み込まれています。
DTC・EC文脈では「サイトの体感速度とストレス度を測る健康診断」と理解すると実務に落とし込みやすくなります。具体的には以下の3指標で構成されます。
- LCP(Largest Contentful Paint):最大コンテンツ描画までの時間
- INP(Interaction to Next Paint):操作に対する応答速度(2024年3月にFIDから正式置換)
- CLS(Cumulative Layout Shift):累積レイアウトシフト
類比(たとえ話)
Core Web Vitalsを実店舗の接客に置き換えるとこうなります。
| 指標 | 実店舗での例え | EC体験での例え |
|---|---|---|
| LCP | 入店してから商品棚にたどり着くまでの速さ | 商品画像・ファーストビューが表示されるまで |
| INP | 店員に話しかけて返答が来るまでの間 | 「カートに入れる」タップ後の反応 |
| CLS | 案内中に棚の位置がコロコロ変わる | 読み込み中にCTAボタンが動いて誤タップ |
つまりCore Web Vitalsは「速い・反応する・ズレない」という、ユーザーが無意識に求めている3原則を数値化したものです。
公式・しきい値
Googleが公式に定義する「Good / Needs Improvement / Poor」のしきい値は以下の通りです。
| 指標 | Good | 要改善 | Poor |
|---|---|---|---|
| **LCP** | ≤ 2.5秒 | 2.5〜4.0秒 | > 4.0秒 |
| **INP** | ≤ 200ms | 200〜500ms | > 500ms |
| **CLS** | ≤ 0.1 | 0.1〜0.25 | > 0.25 |
評価は75パーセンタイル(ユーザーの75%がこの値以下)で判定されます。平均値ではない点が重要で、一部の遅い体験が全体評価を押し下げます。
補足指標として:
- TTFB(Time to First Byte):推奨 ≤ 800ms
- FCP(First Contentful Paint):推奨 ≤ 1.8秒
比較表:旧指標 vs 新指標
| 項目 | 旧(〜2024/2) | 新(2024/3〜) |
|---|---|---|
| 応答性指標 | FID(First Input Delay) | **INP(Interaction to Next Paint)** |
| 計測対象 | 最初の1操作のみ | ページ滞在中の全操作 |
| 遅延の種類 | 入力遅延のみ | 入力遅延+処理時間+描画遅延 |
| しきい値 | ≤ 100ms | ≤ 200ms |
| ECへの影響 | 初回タップだけ | カート追加・決済・数量変更すべて |
INPへの移行により、決済フローの複数ステップすべてが評価対象になりました。DTC事業者にとっては実質的にハードルが上がったと言えます。
応用シーン(DTC・EC実務)
1. 商品詳細ページ(PDP)
LCPの主要因はヒーロー画像。WebP/AVIF変換+fetchpriority="high" で2.5秒以内を狙います。実データでは、LCPを4.2秒→2.1秒に改善したアパレルDTCでCVRが+8.6% という事例が報告されています。
2. カート・決済フロー
INPが悪化しやすい典型。数量セレクタやクーポン適用ボタンに重いJSが乗っていると、200msを超えて離脱率が上昇します。INP 500ms超のECサイトは直帰率が平均+12% というデータもあります。
3. トップページ・LP
CLSはバナーやフォント読み込みで発生。width/height未指定の画像、後読みのプロモバーが原因。CLS 0.25超のLPは、0.1以下のLPに比べCVRが約-7% という相関が知られています。
4. モバイル広告流入
Meta広告・TikTok広告からの流入はモバイル比率が高く、Core Web Vitalsの影響を最も受けます。ランディング後のLCPが遅いと広告のROASが最大20%悪化するケースも。
よくある誤解(アンチパターン)
1. 「PageSpeed Insightsのスコアが全て」 → スコアはラボ値。実際のランキング評価はCrUX(実ユーザーデータ)の75パーセンタイル。
2. 「PCだけ改善すればOK」 → モバイルが優先評価。日本のECはモバイル流入が約70% を占めるため、モバイル最適化が必須。
3. 「LCPだけ直せば順位が上がる」 → 3指標すべて+HTTPS・モバイルフレンドリー等の複合評価。
4. 「INPはFIDと同じ感覚でOK」 → 全操作が対象。決済フローの重いJSは即改修対象。
5. 「一度改善すれば終わり」 → 新機能追加・タグ追加で劣化する。継続モニタリングが前提。
関連用語
- Page Experience(ページエクスペリエンス):Core Web Vitalsを含むUX評価シグナル全体
- CrUX(Chrome User Experience Report):実ユーザーデータの一次ソース
- Lighthouse / PageSpeed Insights:ラボ計測ツール
- TTFB / FCP / TBT:補助指標
- CLS / INP / LCP:3本柱
- CVR / ROAS / 直帰率:Core Web Vitalsが最終的に影響するKPI
まとめ
Core Web Vitalsは「技術指標でありながら、最終的にはCVRとROASに直結する経営指標」です。DTC・ECにおいては、LCP 2.5秒・INP 200ms・CLS 0.1というしきい値を、モバイルの75パーセンタイルで満たすことが2024年以降の最低ライン。Google Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」レポートを毎月確認し、PDP・カート・決済の3画面を優先的にチューニングするのが実務の定石です。